〝お米券〟が配布されるだけで批判的に騒がれてしまう お米が大好きな日本人【谷龍哉】
そもそも、お米券という名の商品券ですが、国から直接国民へ配布されるわけではありませんし、地方自治体を通して国から配布されるものでもないことを理解しておくと、何故こんなに揉めているのかがわかりやすいかもしれません。
国が地方公共団体へ向けた物価高対策の一環として「重点支援地方交付金」という政策をとっており、今回この政策には追加予算で2兆円が決定しています。このうち4000億円が「食料品の物価高騰に対する特別予算」に振り分けられていて、特別予算の使い道の一つに「お米券」という選択肢がありますよというものになっています。(注1)
このあたりの予算に関して、お米券1枚の価格と国がしている海外投資などの政策予算を比較してお米券を揶揄するような書き込みがSNS上で見られますが、物価高対策の予算規模は2兆円と大きな金額が投入されているので、ネットのデマ情報を信じないように注意しましょう。
地方自治体はこの交付金から「プレミアム商品券、電子クーポン、地域ポイント、いわゆるお米券、食料品の現物給付」などの幅広い選択肢から地域に沿ったものを選ぶことになっており、鈴木大臣としてはお米の価格が高騰していることを踏まえて、お米券を選んでほしいという強い思いがあるように感じます。
とはいえ、このような選択肢が用意されているのを見てしまうと、地方自治体が選択肢のなかから、あえてお米券を選ぶのか疑問符が残ります。使い道がお米に限定されている印象が強いお米券を、価格の高騰だけを理由に選ぶのは動機として弱いんじゃないでしょうか。
印象だけでいえば、お米券というフレーズの商品券よりも、プレミアム商品券を配ったほうが「プレミアムだからなんにでも使えそう」といった具合に、市民のみなさんが受け入れやすい気がしてしまいます。
ややこしいですが、お米券で購入できるものはお米に限定されておらず、お米券が使える店舗によって違いがあるものの、基本的にはお米以外のものも購入できるようなので、名前で損をしていると言わざるを得ません。
ここまでの話だけであれば、商品券の印象だけでお米が高騰しているにもかかわらず、国から推奨されているお米券をわざわざ配布しないと声明を出す必要があるのかと感じますが、お米券の価格について大きな物議をかもす情報がニュースやネットなどで取り上げられてしまったことが主な原因になっています。
「お米券は1枚500円のものが配布されるが、実際に使えるのは440円で、残りの60円は中抜きされている!」といった言説が広まってしまったのが発端のようで、「中抜き」という無条件で殴ってもええやろ精神が出てしまう強いワードが飛び交った結果、お米券の配布をしないという声明を出す地方自治体が出てしまうまでになってしまいました。
ただ、地方自治体は普段から商品券を扱っているのだから「お米券がどういったものか分かって言っていますよね」案件にしか見えず、交付金をお米券以外で使うことを市民のみなさんに納得してもらうために、お米券を配布しない地方自治体が炎上騒ぎに便乗しているだけのような気がして仕方ありません。
そもそも、お米券が1枚500円のうち440円しか使えないというのは、普段から贈与用で販売されている「全国共通おこめ券」のことで、「差額の60円は流通経費の一部として購入された方にご負担いただいている」との説明書きを今回のお米券配布と繋ぎ合わせることで、悪意をもって拡散している人たちが問題だと思うんですよね。(注2)
「重点支援地方交付金」でのお米券に関しては、全国米穀販売事業共済協同組合が2025年12月12日に1枚あたり500円の販売価格を一律477円にする方針を明らかにしており、地方自治体向けに期限付きおこめ券を販売することとなりました。全国農業協同組合連合会(JA全農)も2026年1月中旬をめどに1枚480円台で検討しているようです。
注1)物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金 https://www.chisou.go.jp/tiiki/rinjikoufukin/juutenshien.html 注2)おこめ券について https://www.zenbeihan.com/about_ticket/
